旬の会 |
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鶏舎内 |
舎内牧草(真ん中が雄鶏) |
ちょっと考えたくなる話
有精卵は日持ちしない? 以前鶏をたくさん飼っていて卵が捌ききれないとき、市場へ持っていった事がありました。 そのとき、有精卵が本来自然なものでいろんな意味でよいものだと漠然と考えていましたが、市場の人は「有精卵は日持ちがしないからな」といったので「?????」と二の句が告げませんでした。 その後ずっと色々考えましたが良くその理由が分かりませんでした。しかし、つい最近烏骨鶏が抱いていた卵を間違って包んで出したところそれを受け取った消費者が連絡をくれて「白身がパーッと散っているのや半分鳥になったのがあったから驚いた。でも、臭くなかったんですよ。」というのです。 臭くないという事は、腐って腐敗菌が繁殖していないということです。腐っていないのは良いが一体どういうことだろうと思っていましたら、あることに思い至りました。 以前、冷蔵庫に入れるべきかどうかを考えていた事がありました。そのとき、冷蔵庫の5℃では、受精卵が死んでしまうのでいったん冷蔵庫に仕舞ったものは、出したら腐らないうちに食べてしまったほうが良いというふうに伝えていました。 最近酵素の話を読んでいて気付いたことが「有精卵は日持ちしない」理由と関係がある様な気がします。つまり、酵素には生命を維持するものと死後の分解に関与するものとがあるのです。 一般の飼育鶏には、抗生物質が与えられていますのでそれが冷蔵庫に入れた後や店頭に並べられても卵の蛋白質が腐らないようにさせているのではないかと思うのです。 一方有精卵は、冷蔵庫に入れられた後は死んだ状態ですので、常温に戻れば分解を始めますが、酵素が生きているので腐敗ではなく、分解するために臭くならないのではと思うのですが、これについても今後考えてゆくことになると思います。 |
―餌の変遷― 当初餌は、教科書どおりに様々なものを単品で購入して配合していました。いわゆる自家配と言う餌です。その中身は、 ・二混(トウモロコシの粉砕したものと魚粉を混ぜたもの―二種混合の略)、海藻末、米糠、カキガラ、グルテンミール、青草/野菜屑、魚粉、また稀にカニガラ等の資材も試した。 その後二混の中の魚粉や魚粉のエトキシキンという酸化防止剤が気になり始めて酸化防止剤を使用していないものを探し、ようやくこれに切り換える事ができるようになりました。 しかし、ずっと疑問に思っていたのは、自然な状態では、鶏は草や虫、土中の昆虫や微生物を食べているはずで、魚や海藻といった海のものはなくても暮らしているはずだということでした。それに、アメリカからのトウモロコシは、遺伝子組み換えが不分別で入ってきているということもあって、大変悩みました。これは、アメリカにいる知人を通して遺伝子組み換えでないものを個人輸入するということで対応しました。しかし、これも小ロットでは出来ずにコンテナ一杯という状態でないとふかのうでしたし、通関の手続きも費用が嵩み、国内の輸送も手配しなければならないといったことで一時は養鶏は止めるべきではないかとも思いました。その後、遺伝子組み換え(GM=Genetically Modefied )の飛散汚染が深刻になったため、結局これも止め、国内のものを探し、それで得られる量にあった規模に変えようということで当初1200羽いた鶏も300羽に減らし、主要穀物も屑麦に変え、魚粉も止めて魚屋さんからアラを毎日もらってきてこれを冬場は生を粉砕して与えたり、夏場は煮て与えたりするように切り替えました。 自然な飼い方ということで、一時放し飼いにするために囲いをして放したりもしましたが、直に草がなくなり土が露出して雨などが降るとグチョグチョになってしまいます。自然状態での餌の自給などというのは、小面積では不可能だと思い知り、これも将来大きな農場が手に入ったら、実験してみたいと思っていますが、現在のところは断念しました。放し飼いの場合10羽で1反(300坪)の面積が必要といわれています。自然のサイクルに従えば、鶏は春に産卵して孵すのが普通ですので、これほど産むのは異常といえますし、それを支えるだけの滋養が得られなければなりません。そうなると卵一個の値段は到底手の届く範囲に収まらなくなります。また、外で飼うということは、土中の微生物も全部取り込むということになり、病原菌がいるのだと思われますが、放したら必ず1羽、2羽とうずくまり死んでしまう鳥が出てくるのです。小屋の中はさらさらで好気性菌が多いということでしょうか、外の場合は嫌気性の微生物が多くこれらが下痢の原因となって体力のないのが落ちてゆくのだと思います。これも将来の課題です。 現在は、屑麦、米糠、カキガラ、砕石、魚のアラ、青草、野菜屑という単純な配合になっています。屑麦は、一晩水に浸けてから籠に空け一日位(季節によって期間は違う)置いて発芽させ混合しています。こうすることで様々な酵素が働いてたんぱく質も発現した状態で与えられると考えています。 今後も自然に近い状態と飼育という条件を出来るだけ近づけるべく研鑽してゆこうと考えています。 |
黄身の色-卵の黄身の色は食べ物によって大きく変わります。主に穀物のみで育てたりするとほとんど色がつきません。自然な飼い方では、黄身の色は青草や野菜屑によってつきます。これは野菜に含まれるベータカロチンが黄身の色として現れるためといわれています。青草の量は、平均30g/羽/日です。 餌全体としては120g/羽/日ですから、30gは25%量となります。これを維持するには相当量の緑餌畑が必要で、工業卵のように何万羽と飼うとなると広大な面積の緑餌畑が必要になります。 このように本来の鶏の飼い方では、緑餌の量で色が変わるものだという風に覚えておいて下さい。これを原点として一般の卵がどのようなものか考えてみたいと思います。 一般の養鶏では、青草を色が出るほどに与えられる所はありませんので、良心的なところはパプリカの粉を与えているといわれていますが、工業養鶏のような大規模養鶏では、色素粉末を与えています。これは飼料に添加する着色料です。赤色2号や黄色4号といった化学合成着色料です。これでは色が濃く出ますしその濃さも自由自在です。ごく微量で価格も安くて色が濃く出ます。餌が粗雑でも微量で色は濃く出ます。卵に本来の栄養がなくなってきているといわれる所以はこういった所にもあるかと思います。 青草では、やはり相当量の草を毎日与えなければ濃い色は出ません。濃いといっても、工業卵のような濃さが出るのは若草の頃のみであとはかなり薄くなってきます。冬になって青草が不足してくると黄身は白っぽくなってきます。 |
卵の大きさ−卵は色々な大きさのものが生まれます。この理由は様々に考えられますが、母鶏の個体差という点が大きくあると思われます。しかし大きさにバラツキがあってもそれぞれがちゃんと雛に孵ります。これは自然生命の共通する特質ともいえ、人間も人それぞれ身長、体型、性格などが違うように違って当たり前なのです。大きさで分類し、大きなものが得だと思う人の価値観は自然を歪めるものです。鶏は、みんなが同じ大きさ、黄身の色、卵殻の強さなどということはありません。私の農園では、それらはみな一体として扱っています。つまり、自然の与えてくれたままを感謝して戴いています。 |