―食品の鮮度と栄養−
食品の栄養価と土壌 食べ物の栄養価は様々な要因によって異なったり、変わったりする。例えば、土壌の肥沃度、つまり、どれ位ミネラルやビタミンが土壌中にあるかということは、雨や風による土壌の流亡、植物による栄養分の吸収による減退によって異なる。そして、植物のもつ栄養分は、高収量、耐病害性などを目指した育種のために栄養が犠牲になったハイブリッド品種(F1、一代交配種)の利用や化学肥料や農薬等の使い方によって変わる。
土壌の肥沃度によって異なる農産物の栄養価の研究は1948年にアメリカで行われた事がある(1)。ラトガース大学のファーマン・ベア博士が南部の疲弊した土地でとれたトマトと当時まだ肥沃だった西部平原産のトマトを比較したものだ。
トマトの栄養価の違い
(新鮮なもの3.5オンス当たり)
ミネラル |
最低値(南部産) |
最高値(西部産) |
カルシウム |
14mg |
71mg |
マグネシウム |
8mg |
109mg |
鉄 |
.015mg |
29.8mg |
マンガン |
.02mg |
1mg |
銅 |
0mg |
.8mg |
ボロン |
0mg |
.6mg |
コバルト |
0mg |
.01mg |
この数値では、カルシウムが5倍、マグネシウムは13倍、鉄に至っては1900倍もの違いがある。この傾向は他の野菜でも同じだったという。時には鉄、マンガン、銅、ボロンといった必須ミネラルもゼロというものがある。これに対し、1975年のアメリカ農務省の標準栄養成分表の平均値では、カルシウムが13mg、マグネシウムが14mg、鉄が0.5mgになっている。わずか27年間で、いかに土壌が疲弊したかがわかる。
鮮度と栄養価 今回、検討したいのは、鮮度がどれほど栄養と関係があるかという問題。私達は日常畑で直接野菜を食べるという事はしない。例えば、トマトは、少し赤みがかった青いものを収穫し、流通を通して店頭に並ぶ頃に真っ赤になるようにしたものを食べている。時には更に自宅で保存したり、加熱したりして食べている。こんな時ガンの予防や病気との闘いに必要なビタミンは一体どうなっているのだろうか。人参は収穫が早いと完熟の時よりビタミンAが1/2−1/3で(2)、ピーマンは赤くなるまで熟させると青い物よりもビタミンCが2倍ある(3)。どんな野菜や果物も収穫と同時に、植物のもつ酵素によって分解と酸化が始まる。酵素の働きは、熱と光によって加速される。トマトは、通常、農家が収穫してスーパーの店頭に並ぶまで、保管・輸送等で最低1週間くらい掛かる。そして丁度赤くなるのは10日位経ってからだ。その間どれくらいの栄養価になるのかを調べたのが次の表のようになる(4)。
トマトのビタミンC経時変化(100g中のアスコルビン酸量)収穫時青いもの
日数 |
アスコルビン酸(ビタミンC) |
収穫時(青い) |
24mg |
2日目 |
23mg |
4日目 |
21mg |
6日目 |
19mg |
8日目 |
17mg |
10日目 |
16mg 真っ赤に追熟 |
もし、トマトの木になったままで熟していたらこの数値は、50mg近くあるが、常温で4日もすると傷みが酷くなり流通できなくなる。青い状態で収穫しているので24mgだが、これが更に店頭で熟し赤くなる頃には16mgになってしまう。1/3に相当する8mgが喪失している。
葉物野菜のビタミンAは室温で4日経つと75%が失われる(5)。ビタミンCでは、収穫後室温(22℃)に24時間置いておくだけで50%、48時間で89%が失われてしまう(6)。葉酸などもその大部分が失われる。冷蔵保存(5℃)した場合には、2週間経っても殆ど失われずに残っている。8-10℃で保存した場合、24時間後には10-30%のビタミンCが失われる。収穫してすぐ5℃で保存した場合は、1週間経っても10%しか失われない(5)。冷凍すると殆どが残っている。ただし、この例外が夏の作物であるサツマイモ、きゅうり、瓜、トマト、バナナ、柑橘類でこれらは15℃で最も保存が良い。一般流通では、殆どが常温で取り扱われるので、鮮度が落ち、かつビタミンが失われてゆく。(山田)
引用文献:
(1)ファーマン・E・ベアら「野菜のミネラル成分の違い」土壌科学協会議事録3(1948)380−384
(2)US農務省 食品栄養成分ハンドブック1975,175
(3)ジーン・A・ペニントン「食事の栄養ガイド」Avi出版1976
(4)C・E・パントス/P・マーカキス「人工熟成トマトのアスコルビン酸成分」食品科学ジャーナル38,1973:550
(5)ブルーノ・ケベヂュー/フレデリック・A・ブリス「園芸と人の健康」1988−22
(6)マイケル・コルガン「一人一人のビタミン・プロファイル」1982−35