千葉県有機農業推進連絡会

有機ネットちば

放牧鶏
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放牧鶏は鶏が本来の自然な生活をできるようにして、健康を維持しその健康を人間が卵や肉としていただくようにするというものである。

あらゆる生物は進化の過程で生き方を選択しそれを遺伝子に書き込んでいる。 例えば孵化した雛が餌をついばむこと、水を飲む時は嘴を水に突っ込み、頭を持ち上げて喉を流し込むようにする、成熟すると交尾するようになり産卵して卵を抱くなどはだれに教えられるでもなく自然に出来るようになる。 また、どんな食べ物が良いのかを見分ける能力もあるという。 空を鳶が徘徊すると非常に警戒するのもやはり本能に書き込まれたものである。

鶏が健康であることがその生産物にどんな影響があるかを見てみると;
卵ではケージ飼いに比べて; 脂肪 10%少ない。
                  ビタミンA 40%多い、
                  オメガー3脂肪酸  400%多い、
                  コレステロール  34%少ない (一個当り214mgに対し160mg) 

家畜はどんなものでも自然に従うことが最も簡単で手間の掛からない飼い方となっている。

こういう卵や肉こそ完全栄養食品というべきもので、ケージ飼いして多大なストレスをかけ飼料添加物が一杯のものでは、恩恵よりも害のほうが多くなるのは必然である。

人間の摂食試験
 (Jian,Z等,n-3(オメガー3)ポリ不飽和脂肪酸増強卵を食べた場合の血漿脂肪の変化)
 23名を二組に分けて18日間食事をしてもらう。 一組は一般の卵、もう一組にはオメガー3増強卵2個ずつを通常の食事に加えて食べてもらったところ、一般の卵を食べたほうはコレステロール値が上がり、オメガー3卵を食べたほうは総コレステロール値は変わらなかったがHDL(良い脂肪)が増え、悪い方のトリグリセライド脂肪酸が減っていた。 

青草をたくさん食べると黄身も白身もこんもりして盛り上がり黄身に鮮やかな黄色が出てくる。
もう一つの指標は、有性卵がいかに孵化率が高いかということでも判断できる。 本来健康なトリであれば、ほぼ100%近くが孵化に成功する筈であり、かつ孵った雛がどれ位生き残るか、元気かということも生き物の生命力を判断するうえで重要だと思われる。 また、鶏を飼い続けた場合それが病気で死ぬのではなく、寿命で死ぬことも指標といえる。 

その他の鶏の健康度としては、鶏の動き、羽の艶、足の色、目の輝き、姿勢、鶏冠や肉だれの張り、色といったことと、糞の色、匂い、大きさ,硬さなども参考になる。 これらは日常的に観察することによって健康な姿が見えてくる。

一般には、寒い地域では冬に青草が減ってきて葉緑体の中で出来るオメガー3脂肪酸の摂取量は減ってくるが、 干草を若いうちに刈り短時間で天日干しして保存したものには多く含まれていてこれを与え続ければオメガー3脂肪酸はある程度維持できる。 また、海産物(魚、海藻、貝類など)にも多く含まれている。 穀物なども発芽させて与えることで多くの生きた滋養が供給できる。

日本で放牧養鶏で産卵鶏や肉鶏を飼っているところはほとんど無いが、今後の畜産を考えた時、量よりも質が重要で、そのことに費用をかけることで病気の苦しみや病気の対症療法に支払うよりも賢い選択といわなければならない。

放牧地の質、つまり土壌の質もよく研究して十分に栄養価の高い草が育つように土作りをする必要がある。
以下は参考のために、放牧養鶏をやっているアメリカ、カナダの情報を掲載する。


(以下、放牧養鶏のサイトから要約引用)

安い鶏肉製品は、安いだけの価値しかない。

鶏肉を安くするために、養鶏家はブロイラーの成長を早める工夫をしている。 1950年頃は、2kgになるのに3ヶ月掛かったものが、今では選抜育種、成長促進剤、高カロリー飼料で6週間しか掛からない。 短期間で大きくなるために心臓と肺に負担が掛かり死亡鶏の数も増加している。 酸素要求量が増えて心臓の鼓動が増え、右心室が肥大してきてしまいには止まってしまう。 『心停止』と呼ばれるこの症状のため世界中で死ぬ鶏の費用は年5000億ドルといわれている。 

鶏と牛を一緒に放牧すると両方に恩恵がある
 牛と鶏を一緒に放牧するとどちらにとっても非常に都合が良い。 理想的には牛がまず草を食べその数日後に鶏を放す。 こうすると、牛の糞から孵った蛆虫が食べごろで、殺虫剤を使う必要が無い。 鶏の糞で放牧地の蛋白量が増える。 ある調査によると鶏が草を食べた4週間後の草には37%蛋白質が多くなっていたという。 牛が次にここで草を食べると蛋白質を余計に吸収できることになる。 鶏には薬剤を使っていないので糞にも毒が無い。

 鶏を急速に太らせようとする工業養鶏では、心臓がついてゆかずに肥大して停止する事が日常的に起こっている。 被害は経済的なだけでなく鶏の苦しみも過酷で、症状が進行すると水を飲みに行けず脱水症状になる。 一般的に死ぬまで苦しみ続け、直接の原因は脱水、飢え、呼吸困難、心停止が主である。 これは重大な動物福祉の問題だ。(サスカチェワン大学、家畜家禽学、カナダ、『福祉から見たフロイラーの心停止』)

未来の鶏? 羽毛の無い鶏を

Featherless chicken.羽の無い交配種で密飼いでのコストを下げることが目的。 10,000羽をギュウギュウづめで飼うと非常に温度が高くなり、空調が故障した場合熱のために数時間程度で全滅してしまう。 これを防ぐために、熱を逃がし易い裸の鶏が作り出された。 そして、保温のために必要なエネルギーを肥大化のために使うようになる。

科学の限界突破なのか、まずい考え方なのか。 時間が回答を出すだろうが、養鶏業界はろくなことをしないことで有名。 現在市販の鶏肉は、牢獄で育ち遺伝子組み換え穀物で太りほぼ確実に抗生物質と成長促進剤が使われている。 こうすると、以下の問題が起きる。
1)栄養価が低い、2)抗生物質耐性菌の増加、 3)動物の虐待、4)何百万トンの鶏糞による環境汚染。



何故、高い鶏肉を買うのか。

500羽程度しか飼わない牧草養鶏では規模のメリット、つまり雛代、餌代、器具代で割引が効かない。 また、牧草地を変えるために追い込む人が必要ということでコストを下げるのは至難の業。  成長促進のために抗生物質や砒素を餌に混ぜるといった近道を取らず、夜間照明も使わない。 粉砕した鶏や鶏糞を餌に混ぜることもしない。 ただ、牧草養鶏生産者は、利益が非常に少なくて経営が困難であると嘆いている。 高い、牧草養鶏の生産物を買う人はよく理解している必要があるが、その飼い方を見れば違いが一目瞭然だろう。

commercial poultry operation商業生産ブロイラー(肉鶏) pastured poultry operation放牧養鶏

鶏の捕獲者に害

出荷用の鶏を捕まえる捕獲者も鶏舎内の汚染空気を吸う事で呼吸器に異常を起こす。肺かつ量が減り慢性の痰症、ゼーゼーという呼吸音を発するようになる。

工業養鶏場内に3時間いると呼吸器に炎症を起こす。

密飼いされている工業養鶏では、1羽当り30cm2以下のスペースしかなく多いところでは25,000羽近くが押し込められていることがある。 この密飼い状態ではアンモニア蒸気と糞の粉が大量に発生し、3時間この環境にいると急性の呼吸器炎症を起こすという調査研究がある。

鶏が被る被害はいうまでもない。 これが肉質にどう影響するかは明らかで、当然抗生物質やワクチンなどの使用が増えざるを得ない。

鳥にも養鶏家にも新鮮な空気

preening chickens放牧養鶏と舎内養鶏では月とスッポンほどの違いがある。 解放されているところでは、鶏は動き回れるし草や虫が食べられ、きれいな空気を吸う事が出来る。 養鶏家自身も高濃度の埃と匂いのから解放される。